香炉につく黒いヤニ汚れ。正体は木タール
蓋のついた香炉でお香を焚いていると、やがて蓋の裏に黒い粘性の汚れが付着してきます。「はじめて気付いたときは驚いた」「大丈夫なの?」というお話をときおりお客様からも伺います。
目次 :
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黒い汚れ。その正体 - 01
この黒い汚れの正体は、樹木や草葉が燃焼する際に生成される「木タール」という物質です。
一見おどろおどろしい様子をした木タールですが、実は我々にとって非常に身近なものでもあります。調味料(スパイス、香料、お酒やキャンディの風味づけなど)や内服薬の原料としてごく一般的に利用される素材で、もちろん身体に害はありません [参照:木クレオソートの話 | 大幸薬品様HP]
なお、石炭・石油由来の「コールタール」とはまったく別の物質です。
なぜ香炉の蓋の裏に付着するの? - 02
お香を焚くと、原料である樹木や葉などが熱分解する過程で木タール成分が生成されます。気化した木タール成分は香炉内部で濃度を高め、やがて香炉の蓋に触れて冷やされますが、その際、蓋の裏にあの黒い汚れとして付着するのです。
壁紙は汚れない? - 03
香炉内部という特殊な空間でこそ木タール成分は高い濃度にまで濃縮されますが、香炉の蓋から外に出てしまえばすぐさま空間で拡散・希釈されます。また、総量としてみれば、お香はそれほど多くの木タールを出すわけではありません。ですのでお部屋の壁や天井が木タールで汚れる心配はほとんどありません。
実際、私は自室で長年お香を焚いていますが、周囲の白い壁に汚れは確認できません。
ただ、毎回決まって壁に極端に近い位置でお香を焚かれるような場合(たとえば壁から 5センチ未満の距離など)、ある程度の濃度の木タール成分が常に同じ場所に触れることになりますから、白い壁紙などは多少汚れてしまう可能性があります。火災の危険をなくすという観点からも、お香は壁からある程度離れた位置で焚かれることをお薦めします。
木タールの落とし方 - 04
さて、香炉のお話に戻りまして「裏蓋に付着した木タール問題」。
いくら無害であるといっても、木タールの見た目や匂いが気になることはあるかと思います。そんな場合、木タールは容易に除去できます。
洗剤を使ってもよいのですが、ここでは重曹を使った方法をご紹介します(重曹は安価で安全性が高く、汚れもよく落ちるのでお薦めです)。
まず、重曹を水に溶かして重曹水(ゆるいペースト)を作ります(体積比でおよそ1:2 [水:重曹])。この重曹水を布などに取って裏蓋を拭います(重曹水で木タールを溶かしながら拭き取るイメージです)。そして最後に軽く水拭きしてください。意外なほど簡単に木タールが除去できます。
香炉は元々「汚れることを前提とした道具」ですので、あまり神経質になる必要はないように思いますが、気になったときにお掃除をして、長くご愛用いただけましたら幸いです。
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