天然素材のお香ということ
チベット文化圏で古くから作られてきたチベット香。その特徴はいくつかありますが、なかでも重要なもののひとつが「天然素材のみから作られること」です。
天然素材のみから作られるお香。意識せずに聞くと特に珍しいことでもないような印象で、「それってわざわざ言及するほどの特徴なの?」とさえ感じてしまいますが、実際のところはどうなのでしょうか?
目次 :
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01. 昔のお香は何からできていた?
02. 現代のお香は? 03. 天然素材のみから作られるチベット香 04. 香りは素朴。それでいながら奥深い... 05. 合成香料と天然香料 06. 天然香料を慈しむ |
昔のお香は何からできていた? - 01
人類がお香を楽しむようになったのはいまから1000年以上前のことです(天然樹脂や香木をそのまま焚いて芳香を立てる行為自体は5000年以上昔の古代エジプトなどでも行われていたそうです)。
それからしばらくの間は、どんな地域のどんなお香も例外なく天然素材のみから作られていました。当時は合成香料などありませんから当然といえば当然な話で、そんな時代には人工的な合成物質をお香の素材として利用すること自体が難しかったのです。
現代のお香は? - 02
人類がはじめて合成香料を作り出したのは19世紀のことでした。以来、香料の合成技術は日進月歩の進化を遂げます。20世紀に入って香り成分の分析技術が確立されると合成香料の種類は格段に増え、第二次世界大戦が終わって社会が安定するとその製造コストは大幅に下がりました。
安価に安定して供給される合成香料。それは夢の新素材でした。お香の材料として利用されるようになるのは必然の流れだったといえ、結果として、現在では合成香料を使わない(天然素材のみから作られる)お香の方がむしろ希少な存在となってしまいました。
天然素材のみから作られるチベット香 - 03
この点、チベット香では現代においても合成香料が一切使用されません。
伝統的な(化学合成物質が存在しない時代の)レシピ、製法を厳格に守って作られるチベット香には化学合成物質を使用する余地がないのです。またチベット香はチベット伝統医学の下で治療に使われることもありますから、その点からも安易に人工的な素材を使うことは許されません。結果としてチベット香は「天然素材のみから作られる」というお香本来の姿を留めることとなりました。
もちろん、これはチベット香に限った特別な話ではありません。たとえば日本のお香も、丁寧に手作りされているような高級なものは多くの場合、天然素材のみから作られます。このように昔ながらの製法にこだわって作られるお香は、国境やマーケットなどによってお香の進化が分化する以前の「お香本来の姿」を現代に残す存在という点で共通します。
香りは素朴。それでいながら奥深い... - 04
チベット香に調合される天然素材は、白檀、沈香などの香木、乳香をはじめとする天然樹脂、そしてハーブやスパイスなど多岐にわたります。これらを緻密に組み合わせることにより生み出されるのはやわらかく、繊細で、複雑な香りです。
合成香料の華やかな香りに慣れた方には少し素朴すぎるかもしれませんし、お部屋や身体に香りを移して長く残したい方にとっては物足りないかもしれません。なかには「はじめて焚いたときにはどれも似たような香りに感じられ、はっきりと区別できなかった」とおっしゃる方もいらっしゃいます。ただ、そういった方でも何度か焚いていただくうちに天然の香りが持つ繊細さ、奥の深さを感じ取られ、楽しんでいただけることが多いようです。
特に、日常的にお香を焚かれる方には天然の香りが好まれる傾向にあるようです。
天然の香りは表層的でない分、すぐに特徴をとらえることは難しいのですが、反面、焚けば焚くほどにその奥深い部分の繊細さを楽しむことができ、長年焚き続けても飽きることがありません。お部屋で毎日焚いても強い香りが残るようなことはありませんので、生活の邪魔にならないのも魅力です。
合成香料と天然香料 - 05
合成香料は日々進歩しています。香料としては非常に優れたものですので、「天然のものだけがすばらしく、合成香料は劣る」などと安易に語ることはできません。たとえば、香りの華やかさや強さでは合成香料の方が優れています。
ただ、合成香料には限界があるのも事実です。
たとえば白檀。白檀の香りは主にサンタロール(α,β-サンタロール)という物質に由来しますが、このサンタロールは現在の技術では化学合成できません。つまり白檀の香りを人工的に作り出すことはできないのです。代替策として、既存の合成物質の中から香りの比較的近いもの(多くの場合、トランス-3-イソカンフィルシクロヘキサノール)を持ってきて「白檀の香り」として流通させているのが実状ですが、残念ながらその香りは天然の白檀とは異なります。
天然白檀よりも合成された「白檀の香り」を好まれる方もいらっしゃいますので、どちらが優れているという話ではありませんが、いずれにしても合成された白檀の香りと天然白檀の香りはまったく別のものとなります。もちろん、天然の白檀が持つ様々な効果(鎮静、殺菌、浄化、抗炎症、免疫力増強効果など)も合成香料からは得られません(参照:白檀)
天然香料を慈しむ - 06
人類が古来、楽しんできた天然の香り。やわらかく繊細で奥の深い味わいを、是非じっくりと楽しんでみてください。それはきっと多くの方にとって豊かで贅沢な時間になると思います。
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