白檀
お香といえば白檀。そんなイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。それほど有名で人気の高い香木が白檀です。
目次 :
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白檀(ビャクダン)とは - 01
白檀はビャクダン科の常緑樹木です。インド、ネパール、インドネシア、オーストラリアなどに植生しますが、なかでもインド(特に南部のマイソール)の白檀は極めて質の高い香りで知られ、珍重されます。
私の感覚でもマイソールの白檀には上品な華やかさを感じます。 一方、ネパール産の白檀はまろやかで甘さの際立つ印象です。
希少な白檀 - 02
白檀の木が独立して自生できるのは発芽して1年ほどの間に限られ、その後は他の樹木の根に寄生しなければ成長できません(吸盤状の根を他の樹木の根に吸着させて栄養分を吸い上げます:半寄生)。また白檀には雌雄の別があるため(雌雄異株)、雌雄の異なる株が近くになければ受粉しません。そうした性質のため、白檀の栽培は極めて難しいのだそうです。
そんな白檀を人類は長年にわたって利用してきました。紀元前5世紀頃には既に香木として珍重されていたといいますから、以来、白檀は長い年月をかけて採取され続けてきたことになります。
その結果、近時は絶滅が危惧されるようになり、採取や輸出が規制されはじめています。将来に白檀を残すための合理的な対応ですので、もちろんチベット香メーカーも規制を厳守していますが、質の高い白檀をコンスタントに確保するのは大変なようで、入手コストも高騰しています。
白檀の香り。その正体 - 03
白檀の芳香は(木部に含有される)精油が放つ香りです。切り出された白檀が熱を加えなくても十分に香るのは、この精油が香ることに因ります(この点、樹脂の部分に香りを持つ沈香が熱を加えられなければ芳香を放たないのと異なります)。
そして精油の成分のなかで特に香りの鍵を握っているのがサンタロール(α,β-サンタロール)という物質です。サンタロールは化学的な合成が困難であるため、「白檀の香り」として作られる合成香料はどうしても本物の香りとは違ったものになってしまいます(参照:天然素材のお香ということ)
合成香料との違い - 04
現在、一般的に流通している「白檀の香り」はほとんどが合成香料のものですので、香りについてよほど意識の高い方を除けば、合成香料の香りを「白檀」として認識されていることが多いと思います。
ところが、本物の白檀は合成香料と比べるとずっと控えめに、甘くまろやかに香ります。
はじめて焚かれた方が「物足りない」と感じられることも多いと聞きますが、本物の白檀の香りは合成香料とは比べ物にならないほどの奥深さ、繊細さを持ちます。何度か焚いていただければきっとその豊かな香りを楽しんでいただけると思います。
栴檀は双葉より芳し? - 05
ところで、「栴檀は双葉より芳し(=白檀は発芽したばかりの双葉の頃から芳香を放つ)」という故事をご存知でしょうか。平家物語の一節から広まったもので、「大成する人物は幼い頃から優れている」ことのたとえとして白檀が取り上げられています。
白檀好きの私は「双葉の頃からあのすばらしい香りを放つなんて、やっぱり白檀は素敵だ!」と感動し、人にも何度か話してしまいましたが、実際には、白檀の双葉に芳香はないそうです(あの香りは白檀がある程度育ってはじめて出てくるそうです)。
本当は大器晩成型なんですね。考えてみれば、そちらの方がより魅力的かもしれません。
ただ… 「ごめん、このあいだ話した白檀の話、あれ、実は間違いらしくてね…」なんて気まずい状況が、これまでこの日本でどれだけ引き起こされてきたのでしょうか。なんとも罪作りな故事です…
白檀の効能 - 06
漢方やアーユルヴェーダにおいて、白檀は万能薬とされます。
免疫機能を高める効果
白檀に含まれるα-ピネン(アルファピネン)は人の免疫力を高める効果を持ちます。
α-ピネンの効果は近年、様々な実験から明らかになりましたが、チベット文化圏では古くから「お香さえ焚いていれば病気をしない」といわれてきたそうです。チベット香には白檀をはじめ、α-ピネンを含む素材が多く使われますから、昔の人々はその効果を経験的に認識していたのかもしれません。
心(神経)への鎮静効果
白檀には鎮静効果があります。興奮や不安をやわらげ、気持ちを落ち着けてくれるため、仕事・勉強・瞑想など神経を集中したいときにも有効です。
殺菌・消毒の効果
白檀の主要成分、サンタロールは殺菌・消毒効力を持ちます。その効果から白檀は昔から消毒薬や防腐剤としても利用されてきました。
白檀を焚いた際に昇る煙にもサンタロールが含まれ、空間を殺菌・消毒してくれます。葬儀や火葬の際に白檀を焚く(インド、中国に端を発する)風習もこの殺菌・消毒効果と関係があるといわれます。
喉への効果
白檀には炎症を抑える効果があります。
白檀のオイルは肌の炎症を抑えるための抗炎症剤として使われることも多いようですが、白檀のお香は喉の痛みがあるときに焚くとよいとされています。
白檀は去痰作用も高いとされていますので、咳が出るとき、痰が切れにくいときにも向きます(日本の薬事法上「薬」としての効果が認められたものではありませんのでご留意ください)。
気軽にお試しいただきたい天然白檀 - 07
白檀と聞くと「なんだか古臭そう」というイメージから、焚かず嫌いをされている方もあるかと思います。けれどそんな方も本物の(天然の)白檀の香りをお試しいただければ、きっとイメージが変わると思います。
もちろん、チベットのお香以外にもよい白檀香はたくさんあります。特に日本のお線香にはすばらしいものが多くありますので、是非いちど本物の白檀のお香を楽しんでみてください(化学合成された香料を含まない、天然の白檀のお香をぜひ探してみてください)。
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2,890円 | |||
品質の高い白檀のお香。インド、マイソール産の白檀にネパールの白檀を加えて作られたお香です |