チベット香って?
チベット香。その言葉の響きから「外国の、ちょっと特殊なお香」をイメージされる方がいらっしゃるかもしれません。では実際のところ、チベット香とはいったいどんなものなのでしょうか?
目次 :
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00. チベット香とは
01. 天然素材のみから作られるチベット香 A. 天然香の「香り」 B. 天然香の「色味」 C. 天然香の「形状」 02. 伝統医学の下で発展してきたお香 03. 薬草が積極的に使用されるお香 |
チベット香とは - 00
チベット香は、チベット文化圏で古くから作られてきた伝統的なお香です。千年を超えるその歴史を通して、基本的なスタイルはほとんど変わることなく受け継がれているといいます。その具体的な特徴としてしばしば挙げられるのが以下の3点です。
1. 天然素材のみから作られる
2. 伝統医学の下で発達してきた
3. 薬草が積極的に使われる
天然素材のみから作られるチベット香 - 01
チベット香のスタイルが確立されたのは科学技術の未発達な時代です。(近代以降の素材である)化学合成香料はまだ存在しませんから、必然的にチベット香は自然界に存在する天然の素材のみから作られていました。
その時代に使われていたのと同じ素材を、同じ割合、同じ手順で調合して作られるのが現在のチベット香です。
もちろん、チベット香の体系が発展する過程では新しいレシピも生み出されてきました。ただその際も、伝統の趣旨から外れた素材を作り手の判断で勝手に取り入れることは許されません。つまり、そこに天然のもの「以外の」素材が取り入れられる余地はなかったのです (参照:天然素材のお香ということ)。
天然香の「香り」 - 01 A
天然素材のみから作られるチベット香は、やさしく、繊細で、奥の深い香りを持ちます。華やかに薫る合成香料と比べると、人によっては「素朴すぎる」と感じられるかもしれません。「火を着けてすぐに印象が定まる」というよりは「何度も焚くうち、徐々にその奥に潜む複雑さに気が付いて印象が変わってゆく」。それがチベット香の香りです。
天然香の「色味」 - 01 B
チベット香には人工的な着色料が使われることもありませんので、素材本来の色が調合の加減に応じてそのまま表れます。多くの場合は茶褐色、ものによっては赤の色味が強かったり、緑がかっていたりしますが、現代的なお香にときどき見られるような鮮やかな色味のものはありません。
天然香の「形状」 - 01 C
お香には通常、原材料をつなぎ合わせるための「つなぎ材」が使用されます。粘度が高く、香りを持たない植物(椨の木など)が使用されますが、その配合量がチベット香では最小限に抑えられます。というのも(強い香りを持つ合成香料と違って)香りの穏やかな天然素材のみから香りを作り上げるには、つなぎ材を限界まで減らし、その分、香りの素材を多く使用する方が好ましいのです。結果としてチベット香は「太く、折れやすい」傾向にあります。現代的なお香のように「極めて細く、それでいて十分な強度を持つ」形状には仕上がりません。
伝統医学の下で発展してきたお香 - 02
チベット香のもうひとつの重要な特徴として「伝統医学と深く結びついて発達してきた」点が挙げられます。
チベット伝統医学では古来、生薬の研究に力が注がれ、その知識は高度に体系化されてきました(参照:チベット伝統医学)。その膨大な生薬の知識がチベット香の調合にも生かされてきたのです。
たとえば、チベット香には癒し香と呼ばれるお香があります。肉体と神経の緊張を緩和させることを目的に様々な生薬を調合して作られる癒し香は、頭痛をはじめとする痛み、不眠、肩こり、ストレス由来の病気などに対する治療として現在でも処方されます。
そうした文化のなかでお香に携わっているわけですから、作り手は当然、お香が人の身体に大きな影響力を持つことを熟知しています。彼らと話をしていると端々に「身体」「健康」という言葉が出てきます。治療のためのお香はいわずもがな、それ以外のお香についても、彼らが常に「身体に良いものであること」を強く意識して作っていることは、考えてみれば当たり前のことなのかもしれません。
薬草が積極的に使用されるお香 - 03
先に触れたとおり、チベット香は伝統医学の知識体系を活用しながら発展してきました。生薬に関する知見はそのままお香に取り入れられ、なかでも伝統医学においてとりわけ重視され、研究が深化した薬草については、お香にも積極的に使用されています。
とはいいながら、お香に薬草が配合されること自体は決して珍しいことではありません。世界的にみても極めて一般的な手法といえ、たとえば日本の伝統的なお香にも多くの薬草が調合されます。
ただ、薬草を主体とし、その効果・効能を引き出すことを目的として調合された「薬草香」が数多く生み出されてきたことはチベット香独自の傾向といえると思います。
たとえば、ガンデン。こちらは浄化、殺菌を目的として作られた薬草香です。日本の伝統的なお香にはあまり見られないタイプのお香ですので、いわゆる「お線香っぽい」雰囲気はあまり感じられないと思います。しかしながら、その香りは決して奇抜なものではありません。むしろ日本に暮らす私たちにとっても違和感のない、素朴で、どこか懐かしさを感じさせるものだと思います。ぜひお気軽にお試しいただいたいお香です。
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2,790円 | |||
病気の空気感染を予防するために調合されたとされる薬草香ですが、現代ではむしろその極めて高い浄化能力が評価されています |
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3,390円 | |||
チベット伝統医学のレシピに基づく癒し香。鎮静効果の高い沈香に様々な薬草、天然樹脂が調合されています |